在校生インタビュー「ハッタリのきかない場」
── まずは自己紹介と、自分の研究分野や活動を教えて下さい。
馬場省吾:中川研究室M2の馬場省吾です。実験的な音楽について研究しています。論文コース*です。

藤下彩:榑沼研究室M2の藤下彩です。学部では建築を学んでいて、今は建築を思想的な部分と実践的な部分で研究しています。ポートフォリオ・コース*です。

鈴木芳果:平倉研究室のM1の鈴木です。私は職業写真家として働きながら、ポートフォリオコースで仕事とは別のかたちで、写真の作品制作をしています。

飯岡陸:M1の飯岡陸です。僕も平倉研究室で、ポートフォリオコースです。現代美術の展覧会のキュレーションを主に行っています。

染谷有紀:同じく平倉研究室M1の染谷有紀です。論文コースで、熊谷守一という画家の作品をもとに絵画の鑑賞体験について考えています。

在校生インタビュー
── 座談会に参加しているみなさんは、横浜国大ではない大学から受験されたと思いますが、Y-GSCを選んだ理由を教えて下さい。
飯岡:展覧会を作ることを、美術理論と実践の間にあるものだと考えているのですが、理論と実践が結びついた環境で学べる大学院は少ないんです。平倉先生の研究はそのような環境で行われていると思い、受験を決めました。

馬場:研究したい内容が先にあり、僕の研究したい内容が特殊な分野だったため、研究室を探すのにまず苦労しました。そうしたなかで中川先生の研究内容と近いところがあり、家からも近かったので、受けてみようと思いました。

染谷:私は進学するとき国立大であることが結構重要だったのですが、馬場さんはどうですか?

馬場:結局、大学院であれば国立も私立とそこまで学費が変わらないし、私立も探したよ。

染谷:なるほど。では決め手は中川先生の研究が大きかったのでしょうか。

馬場:複数の研究室を訪問したなかで中川先生の研究が最も自分の関心に近いと思ったからですね。

飯岡:僕も学部四年生のときにここを受験するかどうかを考えた上で、平倉先生の授業を聴講して、決めました。

── 大学院の制度としては論文コースとポートフォリオコースに分かれていて、最終的な提出形態が違うわけですが、論文コースで研究をしながら、個人で作品制作もしている人もいます。染谷さんもそのひとりですが、どういった活動をしていますか。
染谷:美術大学の学部にいたころから絵画専攻で絵を描いていたり、学外で公演の企画などをしていますが、研究している内容と作品制作は互いに関係しあっていると思っています。制作や人とのかかわりで生まれた疑問や気になったことを研究してるんじゃないかな。

飯岡:藤下さん、Y-GSCに来て良かったことはありますか?

藤下:学部時代の大学が都内だったんで、ビルばっかりで居場所が無かった。キャンパスが森っていうのがよかったかな。自分で森の中に居場所を見つけられるのがよかった。

飯岡:学部のときは建築学科だったと思うんですけど、教授指導は学部のときと全然違いますか?

藤下:全然違います。建築学科だと、いまある建築に対して疑問を持たずに建築を追求していくことが当たり前で…。私はもっと住むこととか、建築が何のためにあるのかということに疑問を持つことがより重要なのかな、と思っていました。でも、そういうことは建築学科だと設計ばかりでなかなか考えられないんですよね。そういうことを考えるところから始めるのがY-GSCかなと思っています。

飯岡:都市イノベーション学府には建築学科もありますね。そちらの学生とは交流はあるんですか?

藤下:建築の人たちは、Y-GSCの人たちを面白がっているところがありますね。

飯岡:染谷さんはどうですか?

染谷:同じ授業を受講していた建築の学生と一緒に、企画を立てたりしているところです。先日は学生用の黒板が欲しいとオーダーして、話し合いながら学生たちだけで制作しました。おかげですごくいいものが作れたし、いい授業になりそうです。

在校生インタビュー
── そのほか、Y-GSCに入って良かった点はありますか。
鈴木:社会人として、長期履修という制度を利用するよう申請しています。最長で4年まで延ばせて学費も分割されるので、とてもありがたいです。おかげで仕事とも両立できています。

馬場:特別演習という授業があることです。これは毎週木曜にあるのですが、Y-GSC修士の学生全員が交代で、自分の研究や作品についてプレゼンする授業です。他の専門分野の学生や先生からコメントがもらえるのは、視野が広がりとても良いと思いました。同じ分野の人と話していると専門用語だらけになってしまいがちですから。

染谷:機材の設備や、学生が常駐できるスタジオは充実していると思います。PC、カメラ、プロジェクター、スピーカーなどが申請すれば自由に使えるので大変助かってます。研究室にかかわらず集まれる場があるのも嬉しいです。

── 鈴木さんは今、実際にお仕事として写真を撮りながら大学院に通われていますが、それはどうですか。
鈴木:発表のための準備など課題が多く、思ったより大変でした。

飯岡:それは僕もそうかも。ポートフォリオコースなのですがポートフォリオコース専門の授業はなく、論文コースと同じ授業を必ず受講することになります。制作の時間はほとんど自分で確保しなくてはならない。

鈴木:制作以外のことで時間がかかりますね。授業で英語の学術論文を読んでいて、それがちょっと大変です。

藤下:だけど、M2になると授業は減って楽になるよ。

飯岡:英語の授業は、他の大学院だともっと授業数が多いところもあるので、英語が多少できなくても、垣根が低いかもね。

「夜明けとBLUE」「Sugar Baby」
── 制作現場で何か変化はありましたか。
鈴木:まだ入学して半年なのでなんとも言えませんが…。私はずっと写真を独学でやってきて、フリーでやっているので…全然ジャンルが違う人もいるし、そういう人たちの意見を聞くことで作品が変わってきてるかもしれません。ここに入るのは、何かやりたいことがある上で、でないと厳しいと感じます。

染谷:ジャンルが違うっていうのは確かにそうで、いまここに居る人たちも分野がバラバラですよね。他にもファッションや写真、社会学や精神分析など、色んな分野の人たちが集まって来ている大学院ですよね。

藤下:逆に、ジャンルがみんな違うから、自分しか頼れないという部分はある。

馬場:ポートフォリオコースの学生の人に聞きたいんですが、制作を中心に活動している教員が多くはない状況で、やっていて苦労はないですか?

藤下:あります。つらい。

飯岡:先生たちは論文をつくる人なので、「論文化された時におもしろいか」を基準に考えられてしまう(判断されてしまう)ところはあるかもしれない。

藤下:ほんとそうだよね。

馬場:でも、他分野の人に伝わるようにプレゼンをしないといけないから、そういった意味では全く違う分野の先生に見てもらえるというのは、ありがたい機会だとも思うけどね。

染谷:そのつらさはきっと強みになる時がくるはず…。社会に出れば、そういう他分野へのプレゼンばかりになるし。

飯岡:作品を制作する過程は一人で考えなくちゃいけないから、そこは難しさでもある。

馬場:研究室のゼミは何をやってますか?

藤下:月に一回、先生と個別面談をして、いま考えていることや制作方針を先生に伝え、コメントをしてもらいます。先生は知識面で、参考文献などをサポートしてくれます。

在校生インタビュー 鈴木:平倉研究室は、学部生と院生とが一緒にゼミをやっていて、毎週一回順番にプレゼンを行います。論文やポートフォリオにかかわりなく、自分のやっていることをプレゼンして、先生は厳しくコメントしてくれます。

飯岡:学生同士でお互いの論文や作品についてコメントしあう場にもなっているので、ディスカッションみたいな感じになります。

染谷:その他、読書会もしていますね。学部生と関われるのもとても刺激的です。

鈴木:みんなで作り上げていく場、っていう感じもして、いい雰囲気だと思います。

馬場:中川研究室は、読む文献を決めて、毎週購読しています。また、私の研究の進捗報告とそれに対してのコメントももらっています。たとえば今日は、僕の論文をネタにしながら、 学術論文の対象についてや、論文はどのように書かれるべきか議論していました。よく辛口のコメントを貰いますが、納得がいかなければ率直に反論します。

染谷:藤下さん、修了後はどうする予定ですか?

藤下:就職します。大学院で学んだことを活かし、建築の会社で神社の施工をします。

飯岡:他のM2の人も就職が決まっているみたいですね。

馬場:ええ。みんな決まってますよ。私は大学院以前に働いていたので転職という形になります。

染谷:これまでの卒業生の進路はどうだったんですか?

── 約半数は就職活動をして就職しています。実際にダンサーとして世界中を回っているひともいます。あとは編集プロダクションやまちづくりNPO、デザイナー、映画監督などもいます。
染谷:いろんな職種がありますね。Y-GSCのいいところは集まる人やその後のベクトルも多様であることなんじゃないかな。さまざまなジャンルを横断して、考えることとつくることが実践できる場だと思います。



収録:平成27年10月



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※註
ポートフォリオ・コース
Y-GSC内のふたつのコースのうちのひとつ。正式名称は「横浜都市文化コース」。このコースの大学院生は、在学中の制作・活動の記録をポートフォリオに集成させる。つまり作品(映像作品や美術作品)の制作と、制作意図の説明解説を記した小論文が必要となる。
論文コース
Y-GSC内のふたつのコースのうちのひとつ。正式名称は「建築都市文化コース(芸術文化領域)」。このコースの大学院生は自身の研究を修士論文に結実させる。